おうちさんとわたし。

無職おひとりさま50代女性の家づくりと日常

家賃はいくらにいたしましょう。

日凪子です。

ご紹介いただいた地域密着の不動産屋さんは今のおうちさんの最寄駅にあって、歩いて10分ほどでうかがえるご近所さんでした。
社長のMさんは恵比寿さまのように恰幅の良いにこやかな男性で、新しいおうちさんをひととおり見て言われました。

「綺麗じゃないですか。これならクロスを張り替える必要はありません。クリーニングだけでじゅうぶんですよ」

「でも、家具を置いてあったところと色が変わっているし、ほら、ここにも染みが」
「この程度なら大丈夫です」
「そうでしょうか……あ! なら、部分的に張り替えるのはどうですか?」
「それはお勧めしません。替えた箇所と元の部分の差がどうしても目立ってしまうので」
「ならばいっそアクセントクロスにして思い切り変えてしまうとか」
「それもどうかと。このくらいの綺麗さなら、今はまだ下手に手を入れないほうが良いと思います」

本当はクロスを張り替えたぴかぴかの状態で賃貸に出したかったのですけれど……。
プロの不動産屋さんがこうおっしゃるなら不要なのかも。それに37万浮くのは助かりますし。

「では、賃貸に出される条件を決めてまいりましょう」
その言葉にとたんに気合が入って、あれもこれも並べ立ててしまった私です。

「ペットは全部禁止にしてください。ハムスターも小鳥もNGです」
「喫煙も絶対禁止で。ベランダで吸うのももちろんNGです。なんなら喫煙者自体NGです」
「外国のかたもやめてください。私が内見したお部屋の売主さんに外国のかたがいて、立派な職業のかただったのですが壮絶に汚部屋でした」
「綺麗に使ってくれそうなかたでお願いします」
「特にサッシは取り返しがつきません。サッシを大事に扱ってくれるよう契約書に書き添えることはできないでしょうか?」
「私は自宅の窓とサッシを週1で磨いています。1ヶ月に1回、大家の私が無料で窓磨きをするサービスはどうでしょう?」

最後の方はもうめちゃくちゃですね。
でも、店子さんが了承してくれるなら、本気で月1でお掃除サービスしても良いです!

「あっ、年に1度の排水管の高圧洗浄は必ず立ち会ってください。仕事で無理な場合は、私が代理で立ち会います」

まるで我が子を溺愛するモンペのように、あれこれ注文をつけまくったのでした。
Mさんは恵比寿顔で私の話を聞き終えたあと、おっしゃいました。

「ペットと喫煙は承知しました。綺麗に使っていただけるかどうかは判断が難しいですが、家賃の価格帯から考えてそこまで非常識なかたは入居されないと思いますよ」

そうでしょうか……。
やっぱり心配です。

Mさんは、周辺のマンションの賃貸資料を見せてくれました。
「相場は2LDKで20万前後ですね」

「20万!」

強気な価格にびっくりです。
毎月20万も家賃を払うなら、マンションを買ってローンを組んだほうが良いのでは?
それに、新しいおうちさんが建っているのは便利な場所ではありますが、決して人気のあるお洒落な街ではありません。
六本木とか渋谷とか恵比寿とか、そういう人気の場所なら100万だって出すセレブなかたたちはいるでしょう。
でも、どんな贔屓目をもってしも、私のこのおうちさんは、そんなきらきらした都会のど真ん中にあるわけでもないし、コンシェルジュがいるタワマンでもない、ごく普通の小規模マンションなのです。

月20万出してここに住みますか? と訊かれたら、私なら即座に断ります。
おひとりさまの私の感覚では、家賃はせいぜい10万が限度だと思うのです。
同居人や家族がいたり、会社で家賃の補助があるかたはまた違うのかもしれませんが。

うーーーーん、20万かぁ……。

Mさんに、
「とりあえず20万で募集してみますか?」
と訊かれて、あれこれ悩みながら答えました。

「えーと……私は賃貸の期間を7、8年で考えています。そのあいだ家賃で720万の利益を上げたいと思っています」

なぜ720万なのか?

続きます。