おうちさんとわたし。

無職おひとりさま50代女性の家づくりと日常

育て方を間違えたと、父に謝られたこと。

こんにちは、日凪子です。

大学時代旅行サークルに所属していた父は、旅が大好きです。
退職後、念願の船で回る世界一周を成し遂げたあとも頻繁に海外へ出かけ、アメリカや韓国に語学留学までしたほどです。
私にも、一緒にイギリスに行かないか? スペインはどうだ? イタリアもいいぞ? と、たびたびお誘いがあったのですが、

「ごめん、行かない」

と、毎回即答で断っていました。

私は長距離移動が好きではないのです。
自宅から電車で1時間が限界です。それ以上かかるところはすべて海外で、飛行機や船を使って行くところはもはや宇宙だと思っています。
電車がそこそこ混んでいたり、ざわついていたりしたら30分でも嫌です。せいぜい15分です。満員電車にはこの先一生乗りたくありません。

ましてや旅行だなんて、長距離移動の連続ではありませんか。
ドラえもんのどこでもドアのように、ぱっと行って帰ってこられるなら良いですが、そんなことはありえません。行きと帰りの労力を考えただけでぐったりしてしまいます。
それなら家で、現地の風景写真集でも眺めているほうがマシです。

私がこれまでの人生で距離的にも時間的にも一番長く移動したのは、高校生の修学旅行で行った奈良、京都、大阪です。
それ以外の泊まりがけの旅行は、大学時代の横浜1泊2日と、就職前に父と母と3人で新潟のNおじさんのところへ遊びに行った1泊2日だけです。

旅好きの父のもとで育ったのに、旅をまったくせずに成長したのは、母が病弱だったためです。
婦人科系の疾患があって、生理のたびにひどい吐き気と頭痛に襲われて寝込んでいました。普段から体調を崩しやすく、泊まりがけの旅行はすべてNGで、近場の海や山や遊園地へ遊びに連れて行ってもらうときも母抜きで、父と私と弟の3人で出かけることが多かったです。

そんな子供時代に、私自身はまっっっったく、これっぽっちも、不満を感じたことはないのですがーー。

旅行は苦手だからいいや、と誘いを断ってばかりの私に、ある日父が申し訳なさそうに言いました。

「日凪子が子供のころに、お父さんたちが旅の楽しさを教えてあげられなかったから。本当にすまなかったね」

頭を下げて謝られ、困ってしまいました。

もし毎年家族でハワイに行くのが恒例だったりしたら、私は非常なストレスを感じて、ますます旅行嫌いになっていたに違いありません。
だから私にとっては、旅行の楽しさを知らない生活が、ちょうど良かったのです。
やりたいことも欲しいものも、いつも父がたっぷり与えてくれました。
これ以上ないほど恵まれた、満ち足りた子供時代だったと思っています。

「お父さんは日凪子と旅行をしてみたかったんだけどな……」

それは叶えてあげられず申し訳ないのですが。

ただーー。
娘との海外旅行は叶いませんでしたが、妻との海外旅行は実現するのでした。

続きます。