おうちさんとわたし。

無職おひとりさま50代女性の家づくりと日常

辛口の不動産屋さん

日凪子です。

お気に入りのスーパーに近い東十条の物件を見つけて、内見を申し込んでみました。
十条銀座の入り口で、商店街でお買い物もできるしアーケードを通って十条駅にも雨の日も濡れずに辿り着けます。

築3年
1LDK、45㎠
3階
お値段5000万円
東南角部屋

階数が私の希望より若干低い以外はまずまずのスペックです。
線路沿いで踏み切りのすぐ横なのは、気になるかたもいるでしょう。
私はとにかくお子さんの声がダメなのですが、車の音は川のせせらぎのように聞こえて落ち着くので、多分電車も大丈夫でしょう。

こちらの不動産屋さんは、まずファイナンシャルプランナーさんを交えて面談してから案内してくださるとのことで、隣駅のオフィスへうかがいました。
けど、私の場合は無職でローンが組めないので、ファイナンシャルプランナーさんはアドバイスのしがいがないようで、私が語るマネープランを興味なさそうに聞いておりました。
「はぁ、はぁ、はぁ、そうですか」
こんな感じです。
やる気がなさそうなのが伝わってきて、ちょっとガッカリでした。

代わりに不動産屋さんのほうは饒舌でした。
担当してくださったのは若いお嬢さんですが、その上司の男性のかたがズバズバと辛口な発言をされるのです。
私に対してではなく、物件に対して。

「このお部屋、私が内見したときより100万くらいお値下げしたんですけどどうでしょう?」

と、うかがった某物件に対して、

「○○シリーズなんて大枚はたいて買う価値ありません。僕ならこのシリーズは絶対買いませんね」

とバッサリです。
そのマンションは物件探し中によく目にしていたシリーズで、立地が良くてお値段もお手頃な感じで勢いのあるブランドに見えました。

「なにがダメなんですか?」
「間取りが汚いし、あちこちケチって価格を下げていて、根本的に住む人のことを考えた作りになってない」

もうボロクソです。
このあと内見予定の物件まで、

「やめときなさいって、値段に見合ってない安い作りで、おすすめしない」

と、またまたバッサリです。

「えーと、ではこれはどうでしょう」

私がスマホに表示したのは、夏に内見して見送ったものの、今も忘れがたい最上階南向きのあのお部屋でした。
価格も予算ギリギリだし、管理費と修繕費がたった10年で4万まで上がる予定だし、間取りも変わっていて使いにくそうな小規模マンションだし……また辛口のお言葉が飛んでくるかと思いきや、

「いいんじゃないですか」

じっとスマホを見つめたあと、そう言われました。
「でも物件が高い上に、修繕費がいきなりガツンと上がるんです。せめてあと300万安かったらと思うのですが、売り主さんにあと300万下げてくださいなんて、図々しいことは言えません」
「ダメ元で300万指値で出してみますか?」
「いえいえ! さすがにそれは本当に失礼なので。それに私が売り主さんだったら、300万も下げてくださいなんていう人に絶対売りたくありません」
そんな話をしていたら、タブレットで物件情報を調べていた担当の女性のかたが「あ」と声を上げました。

「こちら100万円値下げされてますね」

「ええええ! 私今朝もチェックしましたけど、そのままでしたよ」

どうやら不動産屋さんの情報と、検索サイトに掲載されている情報には若干のタイムラグがあるようです。
100万円の値下げは間違いないとのことです。

この物件は売り主さんが奥様のご実家に同居されていて、売り急いでないと聞いていたので、値段が下がることはないと思っていました。
私が内見をしたのは夏の盛りで、今はもう秋の終わりです。
さすがに焦りが生じたのかもしれません。
動くはずがないと思っていた価格が動いたことに、胸がとどろきました。

けれど私の希望は300万の値下げで、実際に下がったのは100万です。

もしかしたら100万下がったことで、すぐに売れてしまうかもしれません。
それでも、この値段で買うという決断はやっぱりできませんでした。

結局、この日内見予定だった線路脇の物件へうかがうことはなく、胸に興奮の余韻を抱いたまま帰宅したのです。