おうちさんとわたし。

無職おひとりさま50代女性の家づくりと日常

27年間、気づかなかったこと。

こんにちは、日凪子です。

またちょっとデザインをいじってみました。
ブログ名が白く表示されて見えにくいですが、しばらくこちらでいってみようと思います。

さて、今日は27年間気づかずにいたことに気づいた日でした。
夜、ゴミを出すために部屋を出てエレベーターに乗ろうとしたとき、ポーン! ポーン! と遠くで花火が打ち上がる音が聞こえました。

ああ、花火大会か……。

子供のころはお祭りの打ち上げ花火も、家でする花火も大好きでした。空いっぱいに広がる光の花を、目をまんまるに見開いて夢中で見上げたものです。
上京してはじめて出かけたのは、浅草の花火大会です。
とにかく人だらけで前にも進めず後ろにも下がれずで、人にぶつかったり足を踏まれたりと、さんざんでした。
人混みが大っっっ嫌いな私は、もう花火大会は行かない! と心に誓ったほどです。
帰りの電車もぎゅうぎゅうだし、あんなに苦労して、あんなに不快な思いをしてまで、花火は見たくないと。

今のおうちさんに住みはじめた最初の年、花火大会の日に外廊下に面した窓から花火が見えました。窓ごしに見る花火はとても綺麗で、紺色の空一面に、開いては消え、消えては開きと、次々打ち上げられる様子がはっきりと見えて胸がとどろきました。
これからは毎年、ここから花火を見よう。
ドキドキしながら、そう思ったのですが……。

翌年の夏、おうちさんの隣に大きなマンションが建ちました。
それにさえぎられて、もう部屋の窓から花火を見ることはできませんでした。
そのときはガッカリしましたが、次の夏にはもう花火のことなんて思い出しもしなかったのです。
そうやって26回、夏を見送りました。

27度目の夏。

ポーンという打ち上げ音を聞いて、音は聞こえるけど、花火は隣のマンションに隠れて見えないんだよね……と思いながら振り返ると、夜空いっぱいに大輪の光の花たちが咲き誇っていました。
まばゆく輝きながら開いて、光の粒がきらきらとこぼれ落ちるように消えて。不意打ちで飛び込んできた光景に、子供のころのように目を丸くして、ただただ立ちつくすばかりです。

なんということでしょう。

隣にマンションが建ったことで失われたと思っていた窓越しの風景は、部屋の外へ出て、廊下をちょっと進んでエレベーターの前までほんの数歩移動すれば、見ることができたのです。
それも、窓から見るより、さらにあざやかな、華やかな光景がーー。

しばらく見惚れたあと、慌てて部屋に戻りスマホで空を撮影しました。

花火を撮るのは初めてで、ぜんぜんうまく撮れませんでしたが、実際はもっとはっきりくっきりあざやかに色とりどりの光の花が咲いていたのですよ。
このときはもう大会が終了する時刻で、ほんの5分ほどしか見ることができませんでした。
それでも、その5分がまるで奇跡のようで。余韻が耳にも、目にも、皮膚にも残っていて。

なんで27年間も気づかなかったのでしょう。

後悔よりも、27年目の今夜、こんなふうに不意打ちで気づけたことが嬉しくて、心が躍りました。

来年の夏も、ここでまた花火を見よう。
その次の夏も、そのまた次の夏も。
住み替えまで、あと6回か7回、毎年ここで花火を見よう。

うっとりと、そう思ったのです。